オンプレミスAI導入時に見落としがち:運用時の脆弱性対応
クラウドベースのAIサービスが急速に普及する一方で、防衛、医療、金融といった機密性の高い業界では、オンプレミスでのAI活用が求められています。機密データを組織のファイアウォール内に留め、外部への情報流出リスクを最小限に抑えることができるためです。加えて、NIST SP800、HIPAA、GDPRなどの厳格なコンプライアンス要件への対応にも、このようなクローズド環境が有利に働きます。
しかしながら、こうした導入判断の裏には、継続運用における課題が潜んでいます。たとえば、クラウド前提で設計されたAIをオンプレミスに導入したものの、ベンダーが脆弱性修正に対応できず、セキュリティ上の理由から運用停止に至ったケースも確認されています。本記事では、オンプレミス環境における運用リスクの一つである「脆弱性対応」の観点から、特に見落とされがちなベンダー側のサポート体制の重要性について解説します。
01脆弱性の悪用とともに加速するサイバー攻撃
現代のソフトウェアは、機能の多様化や構造の複雑化、アジャイル開発のような高速な開発手法の影響により、脆弱性を抱えやすい傾向があります。さらに、開発効率を高めるオープンソースソフトウェア(OSS)の利用拡大も、1つの脆弱性が多数の製品やサービスに波及するリスクを高め、全体の脆弱性件数の増加につながっています。
実際、ソフトウェアの脆弱性報告はこの10年で急増し、2015年の6,472件から2024年には34,553件と、件数は500%以上に達しました。サイバー攻撃の手法は年々多様化し、既知の脆弱性を標的とした自動化攻撃が拡大する中で、脅威はさらに深刻さを増しています。組織には、脆弱性情報を継続的に把握し、迅速に対応できる体制の整備が求められます。
現在、多くのAIソリューションはクラウド環境での運用を前提に設計されています。クラウド環境では統一されたインフラ上で一括管理が可能ですが、オンプレミス環境では顧客ごとに構成が異なり、ベンダーは迅速な脆弱性対策パッチの提供が困難になる傾向があります。その結果、パッチの配布や適用が遅れ、脆弱性が長期間放置されるリスクが高まります。
02オンプレミス運用を支える具体策とは
シストランは、米国政府をはじめ各国の政府機関への提供実績を有し、「セキュリティファースト」の方針のもと、ソリューションの開発・提供を行っています。セキュア開発ライフサイクル(SDL)の実践、脆弱性への継続対応、ゼロトラストおよび多層防御を取り入れた構成設計により、オンプレミス環境で安全な運用を支援します。
お客様が導入後も安心してお使いいただけるよう、以下の脆弱性対応を実施しています。
- 提供する修正パッチやアップデートは、新たな脆弱性の混入や既存機能への影響を防ぐため、事前に専用のテスト環境で入念な検証を実施。
- お客様が独自の環境をお持ちの場合、脆弱性対応に伴うシステム停止や不具合のリスクを低減するため、ステージング環境の構築、運用への影響を最小限に抑える方法を導入前に提案。
- 脆弱性情報が発見されたら、原則30日以内に修正パッチを提供。
03まとめ
オンプレミス環境はセキュリティやコンプライアンスに強みがある一方で、運用時の脆弱性対応が課題となりやすく、見落とされがちです。クラウドとオンプレミスではセキュリティに対する根本的な考え方が異なるため、ベンダーの対応力を見極めることが重要です。
シストランは、厳しい規制環境下でのオンプレミス導入実績が豊富で、導入後の脆弱性対応も安定した体制を整えているため、安心してご利用いただけます。導入時には機能面だけでなく、運用フェーズでのサポート体制も必ず確認しましょう。
04参考資料
1. 装備品等及び役務の調達における情報セキュリティ基準
2. 防衛省AI活用推進基本方針
3. 悪用された脆弱性の傾向分析